「神子様…どうかこれだけはお心に…。」


悲しげな微笑。

何かを決意した瞳。


「神子様…私は…。」


イヤ…。

ヤメテ…。

キキタク、ナイ…。


「私は、 望美様を愛しているのです・・・・・・。」


そんな顔で。

そんな声で。

まるで、最後のお別れみたいに。

どうして・・・なぜ、そんな風に笑えるの?



























 『  代 価  』



























「銀?・・・銀!銀…――――――――――――っ!!!!」


叫ぶ。

どうして、と繰り返しながら。

戦は終ったのに。

もう、誰も失うことは無いと思ったのに。

また・・・私は、大切な人を守れなかった。


「嘘でしょ・・・ねぇ、銀・・・・・・。」

「・・・・・・はい・・・・・・ご命令を・・・・・・。」


降り積もる雪。

それとは対照的に、銀は温かくて・・・でも、冷たい。

冷たいよ、銀・・・。


「・・・銀・・・・・・なんで・・・。」

「・・・はい・・・ご命令を・・・・・・。」


ちゃんとここにいる。

触れられる。

なのに・・・。

壊れてしまった心。

私の元に残ったのは、銀の抜け殻。

何もない。

空っぽ。

虚無。


「銀・・・。」


上手く言葉が生まれない。

紡ぎ出せない。

真っ白。

全てがモノクロ世界。

名前・・・呼ばれたかもだけれど、

上手く反応できなくて。

それが自分の名だと認識できない。

ただ、私も壊れたオルゴールのように同じメロディーを。

銀と、名を繰り返す。

離れられない。

今、この腕の中にいる銀を放してしまったら・・・。

心が、私の知らない処に行ってしまったみたいに。

この温もりも・・・。


「・・・ご命令を・・・・・・」


繰り返される言葉。

こうなってしまったのは私のせい。

繰り返す彼。

私も繰り返す。

今度こそと自分に誓いながら、過ちを。


「銀・・・大好き。」

「・・・ご命令を・・・はい・・・ご命令を・・・。」


そっと、指を絡めるようにして握りしめる。


「辛い思いさせてごめん・・・痛かったでしょ。」

「・・・はい・・・・・・ご命令・・・を・・・。」


泣けない。

弱虫な自分は、もうずっと前。

運命を上書くと決めた時にサヨナラしたから。

でも、上手く笑えなくて。

結局、泣き笑い。


「こんな運命、変えてみせるから・・・。」

「・・・はい・・・ご命令を・・・はい・・・。」

「だから銀、待っててね。」

「・・・ご命令を・・・はい・・・。」








祈る。


逆鱗に向かって。


彼を救いたいのだと。


だから・・・。


銀に、触れるだけの・・・・・・。
























白龍の逆鱗が、輝く。
















会員No.3 水無月綏漣さまより頂きました。

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作者さまの後書き

初☆十六夜記第一弾は、な、なんと銀さんです!!!
これには作者もビックリ!!
いえ、十六夜記やり始めは大好きなリズさんと決めていたんですか、何を間違えたのか平泉ルートに迷い込んでしまいまして。
そこで・・・やられました。
それはもう、バキューンっと一発で。
銀さん!!そして知盛さん!!!
あぁ、早くもネタバレ書いてしまいましたが、それでも止まらない妄想!!(誰か止めて下さい。)
ぶっちゃけ、今まで遙かはまんべんなく書いていたのですが、銀さん&知盛さんワールドとサイトが化しそうで怖いです。
今は、こうして一番萌てたシーンを書くという醍醐味?を幸せ全開で暴走しているんですが、十六夜で他のみなさんもやって落ち着いた頃に、また一気にED後書けたらいいな・・・(その前に中間試験が・・・)
あぁ、でも水無月はほのぼのよりもシリアス傾向にあるので、
当分はそれが難題です(泣)

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当同盟、一番最初の投稿作品です!(感謝)

もう、これを読んであのシーンを思い出して・・・号泣しちゃいました。
そして、この運命と決着をつけるべく、神子が前に進んでいく姿が素敵です。

とても素敵な作品を本当にありがとうございました。

2005/09/29




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